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「・・・何だそれ。」
伊吹は眉根を寄せ、怪訝な表情で首を傾げた。
「何かー。真っ直ぐでー。二つ並んでー。こーんな。こーんなの。」
未来は立ち上がり、頭上に上げた両手まで使って、くねくね、くねくねと身を捩じらせる。
「蛇?」
「違うの!蛇じゃなくて!地面に!」
真理阿の応えに。
上手く伝わらない苛立ちなのだろう。
未来は少々語気を荒く、それでも意味不明な説明を加える。
「・・・?」
「・・・?」
伊吹と真理阿は、お互い”解るか?”とばかりに顔を見合わせる。
「だからぁ!こーんな!こーんな!」
未来はムキになって、一生懸命身をくねらせ。
「・・・ぷっ!」
その様子に、とうとう真理阿が吹き出してしまった。
「笑ーわーなーいーでぇーっ!」
理解してくれないのが悪い、とでも言うように、未来は顔を真っ赤にして、地団駄を踏む。
「今まで見た事、無い物か?」
未来の気を落ち着かせようと言う意図ではなかったが、不意に投げ掛けられた伊吹の問いに
「見た事、あったよーな気もするけど、良く分かんない。」
未来は怒りを治め、ちょこん、と首を傾げた。
「兎に角、飯が終わったら案内してくれ。」
未来が言わんとしている物が何なのか、解らないままでは座りが悪い。
取り敢えず、それを確認しよう、と伊吹は思った。
「これは・・・!」
未来に先導され、辿り着いた場所にあったものは。
「これ・・・!?」
自動車の、タイヤ跡だった。
「ね?こーんな、こーんな、でしょ?」
未来がまたしても身を捩る。
どうやら未来の表現したかった物は、溝によって刻まれた、タイヤパターンであるらしい。
「車が・・・通ったのか!」
しかし。
舗装などされていない、山道である。
当然ながら、風雨に曝されている。
15年以上前のタイヤ跡が、こうまでくっきり残っている筈が無い。
「生き残り・・・!?」
そして。
自動車が最近この道を走ったと言うなら、確実に、”それを運転した人物”が存在している筈だ。
「え?なーに?これ、何なの?」
一人、未来だけが状況を理解していない。
「と、兎に角!」
「う、うん!」
伊吹と真理阿は、興奮を隠せない。
9年の捜索の末、やっと目的の手掛かりを目の当たりにしているのだ。
「このタイヤ跡を、辿って見よう!」
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