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「亜紀・・・」
「何?」
「いや、いいんだ・・・何でもない・・・」
飲み込むように言葉を止めた。
亜紀は卓也が口を開くのを待つ。
ウィンドウの中の夫は微笑んでいるだけだ。
彼が言いそびれたことを亜紀は考えた。そして。
「疲れているみたいね」
「俺が?」
「うん」
「確かに、ここ数日、現場は50℃を超えているから、
さすがに身体には堪(こた)える」
「早く寝たほうがいいわよ」
このまま続けていると思わぬ方向へ会話が進む気がする。
亜紀は電話を切りたかった。
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