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「お母さんからじゃなくて、お父さんからだと思えば…嫌じゃないでしょ? 」
違うんだ母さん、俺はあなたを嫌っているわけじゃない。
ただ、あなたが書斎にこもりっぱなしなのは、翻訳の仕事に没頭したいのは、俺から逃げたいからじゃないかと思うんだ…
その大金を崩さぬようにと短期のバイトのかけ持ちもしていた。
バンドのまとまった金というとそれしかなく、それでCDを出せないかと思っていたからだ。
それでも少しずつ金は消えて行ったし、そのうちCDを売る労力を考えると、メンバーとローディーだけでは無理で、ある程度のインディー・レーベルと契約できないものかという方向に最近変わりつつあった。
バンドに関する問題は山のようにあった。
それなのに他の四人はいつものようにおしゃべりだった。
「ねえねえ、さっき出口に立ってたYOUのコスプレ、見た? 」
「カッコだけじゃなくて顔まで似てるよね。」
「あの子が第一号だったっけ? 」
それが気に触って、YOUは勢い良くグラスを空けていた。
あの老舗で、そして今日も、自分の演奏はとんでもなくまずく、コスプレなんて連れてちゃらちゃらしている状態ではなかった。
自己嫌悪。
気がつけば、公衆電話の前で話しかけてきた、顔だけはよく見る女の子と、違う店で飲む約束をしていた。
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