第3章 パール・ネックレス

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「お母さんからじゃなくて、お父さんからだと思えば…嫌じゃないでしょ? 」  違うんだ母さん、俺はあなたを嫌っているわけじゃない。 ただ、あなたが書斎にこもりっぱなしなのは、翻訳の仕事に没頭したいのは、俺から逃げたいからじゃないかと思うんだ… その大金を崩さぬようにと短期のバイトのかけ持ちもしていた。 バンドのまとまった金というとそれしかなく、それでCDを出せないかと思っていたからだ。 それでも少しずつ金は消えて行ったし、そのうちCDを売る労力を考えると、メンバーとローディーだけでは無理で、ある程度のインディー・レーベルと契約できないものかという方向に最近変わりつつあった。  バンドに関する問題は山のようにあった。 それなのに他の四人はいつものようにおしゃべりだった。 「ねえねえ、さっき出口に立ってたYOUのコスプレ、見た? 」 「カッコだけじゃなくて顔まで似てるよね。」 「あの子が第一号だったっけ? 」 それが気に触って、YOUは勢い良くグラスを空けていた。  あの老舗で、そして今日も、自分の演奏はとんでもなくまずく、コスプレなんて連れてちゃらちゃらしている状態ではなかった。  自己嫌悪。  気がつけば、公衆電話の前で話しかけてきた、顔だけはよく見る女の子と、違う店で飲む約束をしていた。
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