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対バンやメンバーにひんしゅくをかっているのもかまわぬくらいYOUはやけになっていて、女とべたべたしながら店を出た。
と、店の外で待っていたらしいコスプレが駆け寄って来た。
「YOUさん、はい。」
ドリンク剤が入っているらしい薬局の紙袋を手渡された。
「どうも。」
ファンにウケる、だだっ子っぽい、横柄な口調でYOUは礼を言ったが、その子はまだ話したい様子でついてくる。
YOUはもうメークも落とし、普段着に着替え、ストイックなミュージシャンタイムを終えていたので、無視して歩いていた。
が、連れの女とその友達にはカンに触るらしく、
「子供は帰りなさいよ。」
「コスプレはコスプレらしくライヴの時だけいればいいの! 」
「一回や二回見たくらいでファン面するのはやめてよ。あたし達の方がYOUのこと、MOONのこと、よくわかってるわ! 」
「はいはい。でも今は、YOUはプライベートタイムなんだから。」
友達の言葉に、それまで無言だった女は冷ややかに笑っていた。
その表情は、あんたが何を言おうとYOUが寝たいと思っているのはこの私よ、という優越感に満ちていた。
それを見たとたん、YOUは、この女とは寝たくない、と思った。
その時、彼の視界に飛び込んで来たのは、コスプレの、唇をかみ締めて女を見据える目の鋭さだった。
―今にみてろ!
その目はそう言っていた。
YOUの中で、何かが弾けた。それは、まさしく今の自分だった。腕に抱き取れる自分の姿だった。
女の手を振りほどくと、YOUはコスプレに歩み寄り、優しく声をかけた。
「お前、高校生なんじゃないの? こんな遅くまでふらふらしてていいのか? ん? 」
居合わせたみんながあっけにとられていたが、そんなことは気にならず、
「俺、送ってくわ。」
と今度はコスプレの手を取ってふらふらとYOUは歩き出した。
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