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「こんな時間まで、一人であそこにいたの?」
「うん…」
彼女は口ごもると耳まで真っ赤になった。
「…もう一度YOUさんの顔、見たかったから…」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん。バンバン見て。」
はにかみながら笑う由真を見ながら、こんなに近くにいても、どうしてか手を出したいとは思わなかった。
ブリーチした茶色めの髪にひき立たせられる、二重の大きな瞳が印象的なはっきりとした顔立ちの子。
大人びた綺麗さからは意外な、幼さ、可愛らしさがYOUの恋愛のスイッチを妨げている…というより、そういった関係とは無縁の、天真爛慢な存在でいて欲しいと思わせるのだ。
だから、今夜限りのつきあいにはしたくなかった。
「ねえ、もうこんなに遅いからさ、いちおう家に電話した方がいいんじゃない? 今日は友達のうちに泊まります、って。」
「えっ…私、帰ります。」
「由真ちゃんベッドに寝ていいからさ。俺、下で寝るから。朝までおしゃべりしようよ。」
「…」
「泊まっていってほしいの。このまま帰したら、もう友達になれないような気がして。」
もちろん口説くつもりなんかない。それがわかって由真はどこかがっかりもしているようにも見えた。が、うなずくと、
「電話はしなくていいんです。今の時間うちの親仕事だし。それにぜんぜん私のことなんてかまってないから。」
恐ろしく冷ややかな口調は、YOUが何か冗談でも言わなければと思うほどだった。
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