第3章 パール・ネックレス

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 ここ一週間ほどの目まぐるしい変化を聞いた由真はただ驚いていたようだったが、ギルティーと契約したことを心から喜んでくれた。 マリアが説明する予定をダイアリーに書き留める由真は、絶対他人にもらすなよ、の一言にもうっとりしていた。  彼女はひたむきに自分を愛し、尽くしてくれるのだが、「ファンの目につくと困るから」と真剣に考えているらしく、人目につくところでは決して彼女気取りをしないところもマリアは気に入っていた。 もっとも、他人の目にはマリアと由真は顔立ちなどが似て見えるらしく、一緒にいると兄妹と思われることが多かった。 「…じゃあ、マリアの都合のいい時、電話ちょうだい。あ、たまに、郵便受けに手紙入れといていい? 」 バンドのことが一番大事で、曲づくりの最中の電話や不意の由真の来訪にかんしゃくを起こすマリアの性質を知りぬいた、そつのない言い方だった。 「うん。ついでにキャベツとツナの煮物も入れといて。」  そんなこと、と笑う由真に、マリアは後ろめたいものを感じて目をそらした。
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