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「いらっしゃいませ」
目の前まで来たマスターが、もう一度、亜紀に挨拶した。
イヤミもケレンミもない笑顔だ。
冷蔵庫からコロナ・ビールを取り、
シャンパン・グラスと共に亜紀の前に置いた。
「つまみは、どうします?」
訊いたあと、マスターはメニューを広げた。
中央に付箋が貼ってあった。
亜紀が来るのをマスターは予見していた。
マジック・ペンで書かれた文字がある。
『どうして欲しいですか?』
そんな質問をされるとは考えてもいなかった。
亜紀は黙ってマスターを見上げた。
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