第四話 女二人で

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「いらっしゃいませ」 目の前まで来たマスターが、もう一度、亜紀に挨拶した。 イヤミもケレンミもない笑顔だ。 冷蔵庫からコロナ・ビールを取り、 シャンパン・グラスと共に亜紀の前に置いた。 「つまみは、どうします?」 訊いたあと、マスターはメニューを広げた。 中央に付箋が貼ってあった。 亜紀が来るのをマスターは予見していた。 マジック・ペンで書かれた文字がある。 『どうして欲しいですか?』 そんな質問をされるとは考えてもいなかった。 亜紀は黙ってマスターを見上げた。
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