冷たい雨と裏切りの唄

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 しとしとと、止む気配の無い雫を全身に受け道に転がる少年。  横では熱気を帯びた鋼に雫が落ちるたびに音を立てて蒸気を上げていた。  単独事故。  ぐしゃりと曲がったガードレール、曲がったホイールにちかちかと情けない音を出しながら垂れ下がったウインカーが点滅を繰り返していた。 「こたえは出たか?」  いつの間に立っていたのか。口に煙草を咥えたつなぎの青年がオレに声をかけるので、片腕で両目を被せ呟くように言った。 「裏切ってなんかいない」  オレの言葉に彼はため息をつくかのように紫煙を吐きそのまま煙草を捨てると、それを踏み消しながら言った。 「とりあえず死んじゃいないな。歩けるならあれに乗っとけ。オレはこいつを積んじまうから」  彼が言うほうにはハザードをたいて停車している軽トラ。  何とか力を振り絞り立ち上がると、びっこを引きながら向かっていった。 「あーあ、また今回もひでえな。まっ、しょうがねえ。せーの」    
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