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後ろから彼の声がした。それを無視して軽トラのドアを開ける。助手席にはバスタオルと救急箱、そしてこの件で世話になってる接骨院のカード。
濡れてわからない血の跡を辿って消毒液を適当にかけ自分の状態を再度確認した。
左腕が上がらない。右膝が曲がらない。呼吸のたびに胸が痛い。首が痛い。
ぼろぼろだった。
……でもその先へは行けなかった。
あの日、あの人の言葉が響く。
『バイクは人が裏切らなければ、絶対裏切らない』
「じゃあ、なんであんたは先に逝ったんだよ」
車内のはずなのに、顔は更に濡れ、太ももに雫が落ち続ける。
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