終章 覇王が捧げる愛蜜の花冠

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 ロベリアは狂ったように笑いを上げた。 「そうよ、私がやりましたわ!  どれもこれも!  この国を想うがこそです!  そもそもが、先代王妃は平民と駆け落ちしてから、それがもとで政治が執れなくなった王。  王元妃は反乱軍のリーダーと恋に落ち、亡命しました。  新しく迎え入れた新王妃は、大国王子に刃を向けるような野蛮な王女を産み育てた……!  他国のどこの誰とも知れない平民との子を時期王にするなど、なんと馬鹿げた話でしょうか!  ですから私は、国のためによかれと思っての行動を移したまでです!  アスラーンに、アイシャ王女もミアンヌ王女も必要ありません。  ジャクシル王が、アスラーンに、新たな秩序を打ち立てる新王になって、そして私が隣に――」  国家反逆罪と不敬罪、殺人未遂罪、危険思想罪――  様々な罪状を言い渡され、その日の内に投獄されたロベリアは、狂ったように弁明を続けている。  医者に偽の診断をさせ、ミアンヌを本国から遠ざけると、ロベリアはセルエリアに何人も刺客を送った。  アイシャの計らいでそれら全てが未然に防がれ、手だてがなくなったロベリアは直接ミアンヌを葬ることを断念せざるを得なかった。  次に、チルミーナの名を使い、遅延毒を含ませた菓子を送り続けた。  一つ一つには微量の蓄積毒は、母体に影響はほとんどなく、胎児に悪影響を及ぼす凶悪なもの。それを食べ続けているものと思っていた。  しかし、いくら経っても影響が現れない。順調に育っていく報告を受ける度に煮えたぎるような焦りがロベリアに渦巻いていた。  最終的に、ロベリアは致死量の毒入り菓子を送りつけるに至った。  アイシャがセルエリアに戻るまでの間に一足先にセルエリアに入国したロベリアがミアンヌに菓子を勧めて食べさせ、死亡を見届ける。  そして、全ての罪をチルミーナに被せるつもりだった。  多少の辻褄は合わずとも、チルミーナの養親は国家反逆罪として先に処刑されたグレン。  他に決定的な証拠が出なければ、邪魔なミアンヌとその子を片付け、チルミーナがその罪を被り、弁論の場など設けず、その場で処刑させるはずだった。 「私は、アスラーンのために、アスラーンの……」  牢の外でその様子を眺めていたジャクシルは無言のまま踵を返した。  
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