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立ち上る湯気に艶めく影があった。
薔薇柄、鏡面仕上げのタイルを敷き詰めた壁に押し付けられる乱れた真紅の髪。
揺さぶられ形を変える膨らみのひとつを包むようにして男の顔がある。
男の逞しい褐色の腕が彼女の華奢な肢体――両脚を抱え、戦槍のような鋭い動きが、誘うように甘い蜜を零す蜜口を貫く。
びくりと大きく痙攣する華奢な身体は、もはや限界に近かった。
熱が籠った潤んだ瞳から涙ががはらはらとこぼれ、だらしなく開かれる口の端からはつうっと白い欲の跡が光る。
力の入らない手で男の紫赤の髪の一端をきゅっと握り、拒絶しようとするも。
「アイシャ……抱かせろ、もっと…」
「あっ、あっ、も、もうだめっ……あぁん、あぁ……!」
快楽に抗えない身体は正直に反応するしかなかった。
何度も昇りつめたアイシャの身体は獣のような愛撫を受け入れる。
「あぁん、ラサ……ぁ、ごめんなさ――やぁあっ、ひゃぁああん」
「アイシャ、私の前でその男の名を口にするな」
「……おねが……ジャクシル…も、やめて……」
自重(じじゅう)で落ちるアイシャの身体。
繋がる秘所を容赦なく奥を突き上げる欲望は、蕾を執拗に擦り、溢れる愛液でヒクつくアイシャの弱い部分を壊していく。
「ふ、ふふ可愛い……、そのまま……お前はずっと私のそばにいろ……いいな――っ」
脈打ち、吐き出される欲液が大腿を伝い落ちる。
「……っ、……やぁっ、もう……もういやぁっ」
菖蒲(あやめ)色の大きな瞳がさめざめと涙を流し、目鼻を覆う。
そうしてようやく繋がれていたものから解放されたアイシャはぺたんと浴室の床に座り込み、泣き崩れた。
「あの男のことは……早く忘れろ」
ジャクシルは無表情でそう言い放ち、動けずにいるアイシャの身体に熱いシャワーを向け、吐き出した欲の跡を丹念に洗い流した。
「随分身体が冷えてしまったな……湯に浸からせてやる」
力なく身体を投げ出すアイシャを抱えながら湯船に沈んだジャクシルは、目も合わせようとしないアイシャをそっと後ろから抱きしめ、支える。
「いやっ、熱い……!」
「ダメだ、風邪を引く。
もうしばらくここにいろ」
「離してよ……もう嫌よ……」
「嫌でもいいから浸かっていろ。
そんなことより、お前に風邪を引かれると私が困るんだ」
ジャクシルはそう言ってアイシャの冷えた身体を再度きつく抱きしめた。
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