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午前10時50分――
「ごめん恭子っ。私、二時限目パスするから!」
隣で次の授業の教科書の準備をする友人の肩を叩き、私は一面に嬉しさを散らして笑みを向けた。
「えっ!?パスって…あっ、そっか。今日は第三木曜日だったね。OK。琴音のノートもとっといてあげる」
「ありがとっ、持つべきものは親友ね」
「でしょ?今度、スタバのフラペチーノ奢ってよね」
「あげるあげる!ベーグルサンドも付けてあげる!んじゃ、そゆことで。宜しくねっ」
微笑む親友にそう言って、私は次の講師と鉢合わせする前に階段を駆け下り、前列の扉から教室を抜け出した。
私の名前は、稲森琴音(イナモリ コトネ)21歳。情報文学部の三年生。
毎月、第三木曜日の10時50分。
私は教室を抜け出し、授業をさぼってある場所に向かう。
その場所とは―――
……
「稲森さん、診察室にどうぞ」
お馴染みの看護師さんが、待合室で雑誌を広げる私に声を掛けた。
「どう?調子は」
「はい、特に変わりありません」
診察室に誘導してくれる顔馴染みの看護師さん、柿本さんにそう答え笑顔を向けた。
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