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「はい、すこぶる快調です!」
私は彼の視線を受けながら、スカートの裾を整えゆっくりと椅子に腰を下ろした。
「だから先生、今度私とデートして下さい!」
私は眼鏡越しに見える彼の瞳を見つめ、大輪の花が開く様な笑みを放った。
「すこぶる快調か。それは何よりです」
彼はククッと喉もとを鳴らして口端を引き上げた。
「それだけですか?意を決して愛の告白をしたんですけど」
私は眉を寄せて、プクッと頬を膨らませる。
「意を決して?毎月恒例になってて『すこぶる元気』の後に続く挨拶かと思いました」
彼は澄ました微笑みを浮かべたまま言う。
「挨拶なんかじゃありません!私は本当に先生を――」
「ダメよ、稲森さん。先生をからかっちゃ」
彼に届く前に振り払われた、私の声。
「あなたみたいな若くて可愛い子にそんな事を言われたら、反応に困っちゃうでしょ」
彼から数十センチ右に視線を滑らせると、そこには笑みを浮かべる柿本さんの姿があった。
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