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「私はバイトあるから無理。…琴音も体調が…」
「行くよ、私。参加メンバーに入れといて」
野菜ジュースの紙パックをテーブルに置いて、私はさらりと答えた。
「えっ!?行くって…あんた、本当は胃の調子が…」
「だから大丈夫だって。それに…」
夜、一人で家にいたくない。
一人でいると考えてしまうから……
二度と会わないと決めた、彼の事を…。
「…お酒は控えるから」
心配性の友人に笑顔を送り、言葉を添えた。
高らかな笑い声が行き交い熱気が立ち込める、創作料理の居酒屋。
「琴音ちゃ~ん。ほら~もっと飲みなよ。料理もいっぱい残ってるよ~」
コンパのお相手。大学院生の一人が、私の肩を触って赤ら顔を近づけた。
「あ…うん。頂きます」
酒に酔っているとは言え、私はその馴れ馴れしさを不快に感じながら勧められた中ジョッキを口にする。
…うっ……やっぱ、これマズいかも…。
ビールが喉もとを過ぎた後に再び襲う、奥から差し込んで来る様な胃の痛み。
時間の経過と共に、その痛みの波の間隔が狭くなっている気がする。
あの時と同じだ…
それは、まるで胃の粘膜を一枚一枚剥がされて行く様な強烈な痛み。
手は震え、全身に冷たい汗が滲む。
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