第1章【for oneself ~独りで~】

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一瞬で恋に落ちた。 さっきまであーだこーだ語ったがそんなことどうでもいい。 何でもっと早く逢おうと思わなかったんだろう。 どうしたらあの人に近づけるのか。 それを考えなくては・・・。 「あの・・・すみません」 ビクッ! 僕は後ろから聞こえた声にびくついたが、考えてみればこんな透きとおった声聞いたこと無かった。 ―――もしかして、・・・と期待してふり返る。 「えっと、その・・・少しでいいのでソコ、退いて、くださり・・・ます、か?」 人形が喋っているのかと思った。 「えっ・・・あの・・・。」 歯切れの悪い見っとも無い声を出してしまった。 しかし、仕様が無いと思う。 だって、あの七色の薔薇乙女、陳内マヒロ本人が話しかけて来たのだから。 執事は離れた所にいて、こちらを見ている。 ううん、僕が変なことしないか監視しているのだろう。 目が怖いよ、執事さん。 「あっ、駄目ですよね?ごめんなさい!!図々しい事言って・・・。」 そう言って彼女は、執事の元に駈けよる。 執事は彼女が振り向く前に、ニッコニコの笑顔に戻る。 「どうでしたか?退いてくださるって言ってくれましたか?」 「む、無理だよ斎藤(さいとう)さん!いきなり試練をあたえないで!!」 「う~ん、困りましたねぇ。これでは、入学式に出席できませんね。」 「そんなぁ、見捨てないで~!」 そんな感じの会話が微かに聞こえた。
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