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いつの間にか入学式開始10分前になっていてだいたいの新入生が揃っていた。
「おー、直樹(なおき)!お前早いなー♪」
「あ、一哉(かずや)。お前もここ(姫美詩高等学校)だったんだ・・・」
同中の友人と他愛もない話をしていると、周りの空気が変わった気がした。
・・・いや、変わった。
さっきもざわめいていたが、今は違う意味でざわめいている。
憧れの眼差し、好意の眼差し、驚きの眼差し、戸惑いの眼差し、そして嫉妬の眼差し。
いろんな眼差しが、一人の少女に向けられた。
七色の薔薇乙女・・・陳内 マヒロだ。
ほっそりとした脚を動かし体育館に歩いてくる。執事も連れて。
信じられなかった。こんな人間が実在するんだ、と・・・。
正直言って僕は、七色の薔薇乙女とか言われたって顔が想い浮かぶって程知ってるわけでもないし、もちろん興味もなかった。
ただ一般常識として彼らのことを知っていただけ。
それに少し彼らを憎んでいた。 なにもせず生きていても将来が約束されているんだ。
美しい容姿を持っているんだったらモデルにでもなれるし、家が家なだけに金に困ることもないだろう。
苦労というものを知らない人間が僕は大嫌いだ。
同じ空気さえ吸うのが嫌だと思っていた。 どこかで嫌悪していた。
――――この時までは。
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