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「どうしてそんなことを」
「彼は東南アジアの某国の要人なのです。訳あって、今はそれだけしか言えません。わたくし共は、彼とあなたが会っていたのを知っています。その上でのお願いです。わたくし共は彼の安全を保障するために動いているのです」
東南アジアの某国の要人。
そのことばは栞が今まで彼に対して感じていた不信感を、裏書した。
「では、あなた方が、直接警備をされたらいいのではないですか」
田中一郎と名乗る男は、ようやく笑みを浮かべた。
人を安心させるものとは程遠い、薄笑い。
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