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「カズこそねーのかよ、モテ話」
滅多に出ない話題、せっかくの流れなので、聞いてみる。
「ねーよ。毎日講義と部活。夜はバイト。後は寝てる。知ってるだろ?」
「まーな。合気道部じゃ、女子もいないだろうしなぁ。もったいねーな、いい男なのに」
「……」
カズが俺を見つめて固まった。
それからゆっくりため息をつく。
「俺にはいいが、あんまりそういうこと言うなよ。俺はかなり耐性ある方なんだが……」
なんかブツブツ言ってた。
いつもどおり、カズんちでグダグダ過ごし、適当に飯食いに行った。
お互い週末はバイト入れてないから、毎週こんな感じだ。
カズんちの方が大学に近いから、夜のテレビが面白かったりすると、そのまま泊まったりもする。
俺のお泊まりセット一式置いてあるし、カズも今のところ彼女作る気配ないから、遠慮なく泊まらせてもらう。
カズと一緒にいると、いろんなキャラ作らなくていいし、楽。
風呂上がりに首からタオルかけたまま、缶ビールを煽る。
ぷはーっとオッサンぽく息をつくと、カズがクスッと笑った。
偶然とは言え、同じ大学に進学できて、本当にラッキーだった。
癒される、週末。
「そろそろ寝るか……」
カズが呟き、立ち上がる。
俺用の布団一式を出してくれる様子だ。
身体のでかいカズのベッドはダブルサイズだし、一緒でもいいと言ったんだけど、最初に拒否された。
「寝ぼけてたら何が起こるかわからないから」とか「バイを語るならまずそこから意識しろ」とか言ってたけど、よく分からなくてスルーした。
俺専用の布団に潜り込むと、カズが電気を消した。
明るさの余韻で、暗闇に目が慣れない。
カズのいるベッドの方を向いて、おやすみと告げる。
「……俺以外の野郎のとこには泊まるなよ」
暗くて表情の見えないカズの声がした。
当たり前だっつーの。
泊まるなら、女の子の部屋だ。
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