1章 ノリで生きる丘バイの苦悩

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「カズこそねーのかよ、モテ話」 滅多に出ない話題、せっかくの流れなので、聞いてみる。 「ねーよ。毎日講義と部活。夜はバイト。後は寝てる。知ってるだろ?」 「まーな。合気道部じゃ、女子もいないだろうしなぁ。もったいねーな、いい男なのに」 「……」 カズが俺を見つめて固まった。 それからゆっくりため息をつく。 「俺にはいいが、あんまりそういうこと言うなよ。俺はかなり耐性ある方なんだが……」 なんかブツブツ言ってた。 いつもどおり、カズんちでグダグダ過ごし、適当に飯食いに行った。 お互い週末はバイト入れてないから、毎週こんな感じだ。 カズんちの方が大学に近いから、夜のテレビが面白かったりすると、そのまま泊まったりもする。 俺のお泊まりセット一式置いてあるし、カズも今のところ彼女作る気配ないから、遠慮なく泊まらせてもらう。 カズと一緒にいると、いろんなキャラ作らなくていいし、楽。 風呂上がりに首からタオルかけたまま、缶ビールを煽る。 ぷはーっとオッサンぽく息をつくと、カズがクスッと笑った。 偶然とは言え、同じ大学に進学できて、本当にラッキーだった。 癒される、週末。 「そろそろ寝るか……」 カズが呟き、立ち上がる。 俺用の布団一式を出してくれる様子だ。 身体のでかいカズのベッドはダブルサイズだし、一緒でもいいと言ったんだけど、最初に拒否された。 「寝ぼけてたら何が起こるかわからないから」とか「バイを語るならまずそこから意識しろ」とか言ってたけど、よく分からなくてスルーした。 俺専用の布団に潜り込むと、カズが電気を消した。 明るさの余韻で、暗闇に目が慣れない。 カズのいるベッドの方を向いて、おやすみと告げる。 「……俺以外の野郎のとこには泊まるなよ」 暗くて表情の見えないカズの声がした。 当たり前だっつーの。 泊まるなら、女の子の部屋だ。
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