1章 ノリで生きる丘バイの苦悩

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***** 新歓コンパの後、初めての活動日。 俺はコート内で椎ノ木先輩とシングルスの練習試合をする三上に、釘付けになっていた。 「何あいつ、超うめー……」 「経験者だって言ってたじゃないか。あんなもんだろ」 クールに藤木が呟く。 「だとしても、すごくないか?あの決め球とか……」 でかい身体で全身を使って高い打点から打ち込むバックハンドストローク。 めちゃくちゃ速くて重そうなボールが、空を切る。 現在サークルナンバーワンの椎ノ木先輩も全く打ち返せていない。 おまけにフォームがすごくキレイだ。 中高と経験者なだけあって、基礎がしっかりしているのだろう。俺たちみたいな大学デビューの自己流とは全然モノが違う。 小気味良く決まるショットに、身体が震えた。 「なんであいつ、サークルなんだろうな」 あんなに強烈なショットを持ってるのなら、普通に部活に入った方が良いのに。 「さあ?本人に聞けば?」 つまらなさそうに、藤木が言う。 「なんか訳ありなのかなぁ?」 「いやに興味津々だな。三上が気になるのか?」 「いや……」 言いかけて気付く。 ……これはバイな俺的にってことか? 「ま、気になるっちゃ気になるな。あの身体でプレイも凄いとか、めちゃくちゃカッコよくない?」 ちょっとうっとりした風に言ってみた。 「ちっ……」 なんでか知らないが、舌打ちが返ってきた。
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