1章 ノリで生きる丘バイの苦悩

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ちなみに俺は、今回メンバーから外れた。 俺はレベル的に、メンバーに選ばれるかどうかのギリギリライン。対戦相手や部員の調子によって、試合に出たり出なかったりなのだ。 「能美は応援頼んだなー」 わざわざ椎ノ木先輩に言われるのには、訳がある。 試合に出ないとき、審判役が回ってこない場合には、俺は必ず応援団長的な役目を仰せつかる。 嗄れるほど声出すし、もちろんヤジり方も派手だと自覚している。 試合に出なくても、相手には必ずうるさいヤツとして顔を覚えられている。 応援だって野次だって、全力でやった方が断然楽しいからな。 「三上ー頑張れよー。俺、めちゃくちゃ応援してやるからなっ」 デカイ背中をバンバン叩いて言うと、三上は嬉しそうにうなずいた。 「……俺は?」 藤木までそんなことを言う。 「何お前、今日は素直だな。俺に応援してほしいの?」 ヘラヘラと茶化して言う。 「……三上は特別か?」 そう来るとは思わなかった。 何?軽くヤキモチか?ツレの座が危ないとでも思ってんのか? 「なーに言ってんだ、藤木。お前もめちゃくちゃ応援してやるに決まってるだろ?」 頬っぺたツンツンしながら言ってやった。 若干赤くなった藤木。何も言わなかったので、俺は納得したものと見なした。 「おっ、来たみたいだぞー」 ラケットバッグ担いだ野郎の集団が、こっちに向かって歩いてくるのが見えた。 先頭は何回か見たことあるキャプテンで、高木(たかぎ)さんって人だと思う。 サラサラ茶髪のイケメンで、泣きボクロ。めちゃくちゃ色気のある人だ。 テニスも椎ノ木先輩と張るくらいには上手い。 コートに集合し、整列してみると、西大寺側は30人ぐらいで来ていた。 レギュラーメンバーしか連れて来なかった、と高木さんは言っていたが、うちとは規模が違うと感じさせられる。 ザッと並んだ相手チーム。見たことのある顔が多い中で、見慣れないけれど超絶に目立つ人物に、目が留まる。
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