1章 ノリで生きる丘バイの苦悩

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「……みんなガン見だね。メンバー紹介しておこうか」 高木さんが、苦笑しながら紹介を始めた。 「……でコイツが、シングルス3の大塚雄二郎(おおつかゆうじろう)。ウチ期待の新入生」 目立つそいつは、一歩前に出てペコリと頭を下げた。 何が目立つって、その容姿だ。 スラッと高い身長に小さい顔。 長い手足は芸能人かモデルかって感じだし、涼しげな瞳はカラコンなのか元からなのか青みがかったグレー。 明るい蜂蜜色の髪は緩くウェーブしているけれど、なんだか地毛っぽい。 一言で言うと、日本人離れした王子様。 これでテニスも上手いって話だろ? なんだそりゃ?どんな不公平だよ! 名前は、めちゃくちゃ日本人だったよな?なんとか太郎みたいな……。 外国のひとではないんだな。ハーフか?クォーターか? ジロジロ見ながら一人脳内押し問答していると、王子と目が合った。 「……ぷっ」 え?今、俺笑われたんですけど。 めっちゃバカにしたみたいに。 ムッ!なんかいけすかねーヤツ! 全力で三上応援してやる……。俺は固く心に誓った。 試合は2コートを使って、それぞれシングルスとダブルスを行うことになった。 シングルス3は初戦なので、三上と王子はコートに入った。 ラッキーなことに俺は審判を免除された。 その分応援頑張れよってことだ。 「三上、あいつなんかいけすかねー。やっちまってくれ」 練習時間を終えて、ベンチで水を飲む三上の後ろから言う。 「……任せてください。能美先輩が応援してくれたら、絶対勝てますから!」 うちのワンコは心強いな! 口には出さなかったけれど、犬にするみたいに思わず頭をガシガシ撫でてしまった。 「せ、先輩?」 「めっちゃ応援してる。行ってこい!」 試合を前に、キョドる三上をコートに送り出した。
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