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「ナイッショーッ!」
三上が決めるたびに、デカイ声を張り上げる。
「オラオラ、ビビってんのかー?」
もちろん野次も忘れない。
応援任せられた手前、いつもどおり声を出しまくる俺だったけれど、内心はそれどころじゃなかった。
……めっちゃすげぇ。
どっちも。
三上がサークル内で見たことないくらい上手いことは分かっていた。
でも、対する王子も壮絶に上手かった。
ほぼ互角。
「三上ぃぃーっ!」
コートの隅に、ショットが決められると、悲鳴に似た叫び声が出てしまう。
三上はパワーヒッターだが、王子はコースを突いてくるのが上手い。
出来る限りの声は出しながらも、超絶に上手い二人の、タイプの違うプレイに見とれた。
結局セットカウント2-1で三上が勝った。
勝ったはいいのだけれど、ゲームはかなり取られていたし、最後まで苦戦していた。
「先輩、俺頑張りました!」
汗だくの三上が、満面の笑みで言う。
「おー。めちゃくちゃ頑張ったな!えらかったぞ」
汗でびしょびしょの頭を撫でてやる。
後で洗ってやりたい……。うっかり飼い犬扱いしそうな自分を抑える。
「……っと、長引いたからダブルス1始まってるな!」
急いでコートを移動する。
試合前あんなこと言ってたし、応援に行かなかったら、後で拗ねそうだからな。
なんだかペットが増えたような気分だ。
藤木のキャラってあんなのだったかな。
藤木の相方は、いつも3年の森川先輩で、このペアはかなり固い。いつも安定していて波がないので、安心して見ていられる。
俺はすでに嗄れてきた声をさらに張り上げた。
「藤木ーっ!ナイスショーッ」
気付いた藤木が、ラケットを構えたまま、横目でこっちを見てニヤリとした。
よし、アピール完了。
安定のペアは安定したショットをガンガン決め、危なげなくゲームを取った。
「シングルス2本、ダブルス1本取っての勝ちかぁ」
練習試合が終わり、コート整備のトンボを引きながら呟く。
西大寺大学は、決して弱い方じゃない。これまで負けることの方が多かった。
うちが強くなったのかな。三上とか藤木とか……。
俺も頑張んなきゃな……。
明日から走りこみでもやってみるか、と真面目に考えた。
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