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サークル部屋のドアを開けて、ロッカーの前に立つ。
着替え、着替えっと。
ふと視線が気になって、隣でシャツ半かぶりの藤木を見た。
「……なに」
「いっ、いやお前、気にしねーの?」
「は?」
「バイだとか言ってるわりに、スパンスパン脱いじゃっていーわけ?」
……っ!そうだったぁー!全く意識してなかった!
やっべ。どうするよ?
「……べ、別にお前相手に意識したってしょーがねーだろっ」
吐き捨てるように言って、背を向けた。
「お前が意識しようがしまいが、俺はどうでもいいんだけどさ。一応気をつけろよ、オープンにしてるんだから……」
藤木の言うことももっともだが、正直男の着替えに恥じらえって方が無理だ。
丘バイの苦悩は続く……。
ラケットバッグを肩に担いでコートに出る。
テニス自体、めちゃくちゃ上手い方ではなく、ほどほどだが、何事も形からだ。
服装もガチガチのテニスウェアは敢えて避け、こ洒落たTシャツに短パンで、チャラっと感を出す。
体育会系の部活ではこうは行かない。サークルならではの緩さだ。
集合がかかるまで、藤木と軽くラリーをする。
パーン、パーンと小気味よい音がして、ラケットのホットスポットに当たってることがわかる。
気分良くラリーを続けていると、黄色い声援が耳に入った。
「きゃーっ!フジノウ最高ーっ」
……なんだその省略形は。
若干コケつつも、1人や2人じゃない声援に、気を良くしてラリーを続けた。
ああ見えて、藤木もイケメンの部類だ。テニスもまぁ上手い。よってモテる。
「……コート外で騒ぐぐらいなら、サークル入ればいいのに」
藤木がしれっと言う。
こいつは見た目爽やかくんだが、中身は案外クールだ。モテるくせに女の子に容赦ない。
「はーい。頑張ってるよーん」
女子の皆さんに、ブンブン手を振って見せる。
冷たい藤木をフォローすべく、俺はギャルサービスに精を出した。
「てか、よかったらサークル入ってねっ。キミたちみたいなかわいーコ、大歓迎!テニスも楽しいよー」
リップサービスもぬかりなく。
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