1章 ノリで生きる丘バイの苦悩

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そう。時は4月。 どこのサークルも、部員の勧誘に必死なのだ。 俺らの名前を知ってるってことは、新入生じゃないのだろう。でも、何年生だろうと可愛い女子部員が増えるのは、マジで大歓迎だ。 サークル活動では、テニスはもちろんだけど、夜の部も重要だ。 飲み会は結構頻繁に開催されていて、可愛い女子部員は飲み会での需要も多い。 飲み会大好きな俺は、可愛くてノリのいいコを求めていた。 ……のだが。 「……今日って新歓コンパだよな?」 遠い目をする俺。 「そうだけど、何?」 クールにかわす藤木。 場所は大学近くの居酒屋『はちべえ』。うちのサークルの飲み会は、たいていここで開催される。2階の座敷で、俺はガックリとうなだれていた。 「お、女の子がいない……」 「いるじゃん、そこにもここにも」 藤木が見知った顔を顎で示す。 「……じゃなくてぇー!新入部員にっ!」 そうなんだ……。 俺の求めていた新入女子部員が……。 いない。 「俺の青春がーっ」 叫ぶと、なじみの女子部員に白い目で見られた。 「うるさいよ、能美。早く座りな!」 「……はーい」 里見(さとみ)先輩は3年の女子部員だ。 キレイ系でちょっとキツい。ゆえにノリはあまりよくない。 「みんなー座ったな。……よし、んじゃ始めるか」 部長の椎ノ木(しいのき)先輩が、一番前の真ん中の席からゆっくり立ち上がった。
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