1章 ノリで生きる丘バイの苦悩

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2次会はお決まりのカラオケだ。 もはやみんなできあがっていて、歌のヘタウマなんか関係ない。 下っぱでシラフに近いやつが取った大部屋に適当に座り、早い者勝ちに曲を入れる。部屋を取るのは、まあいわゆる藤木あたりの仕事なんだけど。 とりあえず、歌って踊れるやつを。 回ってきたリモコンで、ピッピッピーといつもの曲を入れた。 チャラチャーッと聞きなれたイントロが流れ、俺はマイクを握った。 今をときめくアイドルIKB48の曲だ。さすがにキーは2つ下げておく。 「出たーっ!能美、最高っ!」 歌い出しから声援が飛ぶ。 もちろん完璧な振り付きで間奏まで歌いきった。 「あーりがとぉーっ」 満面の笑みで手を振る。 「行くぞっ能美!」 田村が加わり、これも完璧な振り付けで続きを盛り上げてくれた。 肩で息をしながら、台を降りる。 さすがに酒が回った状態でフルコーラス歌い踊るのはしんどい。 ……が、次の曲が椎ノ木先輩がウケ狙いで入れたアニソンなのを耳が拾うと、身体が勝手に台の上に戻った。 手足をめちゃくちゃ派手に動かす。 全身を使ったちょっと滑稽なダンス、いわゆるオタ芸ってやつだ。 「能美、オタ芸もキレキレだなー」 間奏中に、椎ノ木先輩が笑う。 別にオタクじゃないけど、テレビで見て覚えた。 基本、楽しければなんでもやっちゃうもんで。
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