577人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
さすがに疲れた。
ちょっと休憩……とボックスを出てトイレに立つ。
帰り際、上の階へ続く階段に座る大きな影を見つけた。
躊躇いなく声をかける。
「どした、歌わないのか?」
「能美先輩……。すごいっすねぇ」
三上は多少トロンとした目をしていた。新入部員ってことで、1次会でも相当飲まされてたから、回ってるんだろう。
「てか、先輩ぃ来てくんないしぃ……」
でかい図体ですねたような口調。
「は?……あぁ、1次会か。わりーわりー。お前、先輩らに囲まれてたからさぁ」
「俺、待ってたのに……」
うわ、いじけた犬みたいになってるよ!
何これ、見た目とギャップ有りすぎ!
もしや、ギャップ萌えってやつですか?
今度綾子辺りに聞いてみよう。うんそうしよう。
「先輩ぃー。これからよろしくお願いしますねー。俺、先輩について行きますからぁ」
でかい図体で絡んでくる。
ゴツい腕が背中に回り、肩口に頭が擦り付けられた。
何コイツ、酔ったら甘えるタイプなの?
「わーった!わかったからぁ……ほら、歌いに行くぞ」
俺は、覆い被さってくる三上の背中をバシバシ叩いた。
「何お前、もう三上タラシこんだのか?」
カラオケの帰り、駅までの道で、藤木が聞いてきた。
「は?タラシこむって何よ?」
「見たぞ。階段とこで抱きしめられてんの……」
げ。マジで?
「イヤイヤ、抱きしめられてはないって。絡まれてただけだしー」
「本当か?お前、天然タラシだし、信用ないよなぁ。おまけにバイなんだろ?三上みたいなの、タイプ?」
そうだった!
俺はバイ。バイだったらどういう反応する?
んー……。
「ま、タイプかどうかは置いといて、確かに三上いいカラダしてるよな。抱かれ心地よかったし!」
……こ、これで正解?
「やっぱタラシたのか。お前ってヤツは次から次へと……」
「は?」
「いや、なんでもない。走るぞ。終電来る」
「マジで?ヤバッ!」
俺たちは走り出した。
「……先輩。バイって……、何?」
後ろで呟くでかい影には気付かずに……。
最初のコメントを投稿しよう!