1章 ノリで生きる丘バイの苦悩

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「……でさー、俺、天然タラシとか言われちゃったわけよ。どう思う?」 飲み会明けの日曜日、朝から上がり込んだ幼なじみの部屋で、俺は愚痴っていた。 「天然タラシか……。言い得て妙、だな」 小難しい顔で小難しいセリフを吐くコイツは、菅田一宏(すがたかずひろ)。 小学校のころからのツレで、中高も一緒、学部は違うが大学も一緒という腐れ縁だ。 綾子や由香に言わせると、「幼なじみ萌え」で「まさに腐れ縁」だそうだ。 余計な妄想をされていることは、間違いない。 カズは、俺みたいなノリで生きるチャラチャラしたキャラじゃない。 昔から一本筋の通ったところがある生真面目なヤツなので、一緒にいるとよく不思議がられる。 が、そこは幼なじみ。全く似ても似つかない俺たちだが、長年の付き合いでお互いを知りすぎているせいか居心地は良く、空気のような関係だった。 「で、ナオはいつまで続けるんだ?」 「何を?」 「男もイケるふり。無理があんだろ、女好きのドストレートのくせに」 ため息つきながら、カズが言う。 「別にいつまでって……。あえて言うなら無期限?このキャラ超女ウケすんだよねー」 ヘラッと笑って言うと、カズがこめかみを押さえた。 「本当にバカだな」 「バカで結構。楽しけりゃいーの、俺は」 「楽しいだけのうちはいいけどな、気をつけろよ」 そんなことを藤木にも言われたな。
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