577人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
「……でさー、俺、天然タラシとか言われちゃったわけよ。どう思う?」
飲み会明けの日曜日、朝から上がり込んだ幼なじみの部屋で、俺は愚痴っていた。
「天然タラシか……。言い得て妙、だな」
小難しい顔で小難しいセリフを吐くコイツは、菅田一宏。
小学校のころからのツレで、中高も一緒、学部は違うが大学も一緒という腐れ縁だ。
綾子や由香に言わせると、「幼なじみ萌え」で「まさに腐れ縁」だそうだ。
余計な妄想をされていることは、間違いない。
カズは、俺みたいなノリで生きるチャラチャラしたキャラじゃない。
昔から一本筋の通ったところがある生真面目なヤツなので、一緒にいるとよく不思議がられる。
が、そこは幼なじみ。全く似ても似つかない俺たちだが、長年の付き合いでお互いを知りすぎているせいか居心地は良く、空気のような関係だった。
「で、ナオはいつまで続けるんだ?」
「何を?」
「男もイケるふり。無理があんだろ、女好きのドストレートのくせに」
ため息つきながら、カズが言う。
「別にいつまでって……。あえて言うなら無期限?このキャラ超女ウケすんだよねー」
ヘラッと笑って言うと、カズがこめかみを押さえた。
「本当にバカだな」
「バカで結構。楽しけりゃいーの、俺は」
「楽しいだけのうちはいいけどな、気をつけろよ」
そんなことを藤木にも言われたな。
最初のコメントを投稿しよう!