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ぼんやりとした面持ちで扉を見ていると真横からの視線に気づいた。そちらへ、顔を向けるとカチューシャを付けて雀茶色の髪色に白のメッシュをしている遅刻青年が居た。青年は飽きることなく私を見つめている。というより私を見ていて見ていない。私を通して何かを見ているような奇妙な感覚がある。
「……何?」
痺れを切らして尋ねると、青年は我に返ったように目を見開く。そして小さな声で囁くように何かを言った。それを言い終えると彼は踵を返して隣のクラスに入った。それと同時にジョンから呼ばれた。
教室に入る前に考える。
――『気をつけろ』って何から気を付ければいいの?
その考えは教室内の拍手で掻き消された――
∞
軽い自己紹介が終わり、割り当てられた席に着く。席は窓側前から四番目のとても良い席だ。快晴の空を眺めると隣から肩を突かれた。隣を見る濡羽色短髪男いた。見るからに自分、スポーツ好きなんですみたいな風貌だ。その人が話しかけてきた。
「アンタ帰国子女なんだって?俺も帰国子女なんだ」
「へぇー何処の国に?」
「ニューヨークに中学二年までいたんだ。まぁ、帰国子女同士仲良くしよう」
「よろしくね」
隣人の槇下(まきした)龍也(りゅうや)君とジョンが注意するまで会話を楽しんだ。
∞
そして、あっという間に放課後になった。休み時間と昼休みは質問攻めで潰れ疲労困憊になりながらも、クラスの人達の顔と名前を覚えた。どうやらこのクラスはフレンドリーな人間がたくさんいるようだ。軽いクラスの雰囲気に緊張していた身体が解れて一日で大分クラスに馴染めた気がする。
「なぁ、白木は部活何処にするのか決めたか?」
「部活?」
槇下君はリュックの中をあさり一週間前に行われた部活動紹介の時に端から端まで全部の部活や愛好会等のパンフレットを机に広げた。その中からまだ部員募集をしている部活へ絞っていく。残ったのは――
「うっわぁこれだけかよ……」
「編入してくるのがもう少し早かったら良かったなぁ」
と、半分諦めで残ったパンフレット五枚とにらめっこをする。まず一つ目、囲碁部。結論は囲碁が出来ないので無理。二つ目、黒魔術部。アブナイ臭いがするため無理。三つ目剣道部。剣道なら良いかと考えたが槇下君曰く顧問が元やくざで怖いらしいのでこれは保留。
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