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徹の戻りを待つ乾と流は風紀委員への連絡を済ませ、広場から路地の方をじーっと見つめていた
「徹、遅いさね……」
「うん…何かあったのかな…?」
二人の表情が少し暗くなる。帰ってくる時は多少なりとも怪我はするが、時間をかける事はあまりなかった
なぜなら彼は相手の実力を計るのが得意だから。勝てる戦い方を戦う前から考え、戦っている最中もそれをコンピューターのように素早く正確に考える。そんな頭の回転力、悪く言えばずる賢いところが彼の喧嘩や戦闘を早く終わらせる要因となっていた
だが、そんな彼が大きく(と言ってもまだ10分程だが)時間をかけるのは、彼の身に予想だにしない事が起こったからだろう
「…やっぱり、徹でも能力者には勝てないんさよ」
ポツリと乾が呟く
「能力者って…不良さん達は戦いに使える程、超能力のレベルは高くないって、乾ちゃん前に言ってたじゃない」
「……やっぱりあるんさ」
「え?」
「幻想御手(レベルアッパー)が」
「れべる…あっぱー…?」
「なにそれは?」と、そう聞こうとした時、路地の方から微かに声が聞こえてくる。それは待ちわびていた声
「お兄ちゃんだ!」
「徹…!」
なんと言っているのかよく聞こえないが、こちらに声をかけているような気がする。既に不良達を倒したのだろう
「徹っ!!無事なのさ!?」
「………ぉおおお!!」
「…え?」
何か叫んでいる。それもこっちに向かって全力で。おそらく何かの危険信号だ
仲間の不良が来ているとかそういうものではないだろう。徹は一言しか言っていない
流と乾はもう一度、徹の叫びをよく思いだす
(ふ…)
(せ…)
((ろ…?))
二人は顔を見合わせ、路地の方をもう一度見た
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