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風紀委員の支部から出た徹は乾に電話をかける。どこかの変態のせいで随分と時間が経ってしまった。心配はしてるだろう
電話に出る音がする
『徹?随分と遅かったさね』
「ああ、膝に変態を受けてしまってな……」
『意味がわからないさ……』
「……」
風紀委員の支部に向かう前もそうだったが、友人の元気がない気がした。敢えてボケてみたのも、それを確かめる為にやっただけだ
『……徹』
「なんだ?」
『流ちゃん、オレの知らないところで変わっちゃったのさ?』
「………」
徹は再び沈黙する。友人の知る流は人懐っこく、元気で明るくて、それでいて誰かが悲しむのを嫌う。そんな少女だ
だから自分が怪我をしても平気だとやせ我慢をする
(…いや、そうじゃないな)
それだけなら特に変わったとは言えない。乾が言いたいのはそこじゃないだろう
乾が送ってきたメールの内容をよく思いだす
友人が変わったと言ってるのは、椎名流と言う少女の事を完全にはわかっていないのが原因だろう。兄にはわかっていた。必ずそんな行動に出る事には
「危険な行動を当たり前のようにする事か?」
『…そうさ。流ちゃんはあんな行動する子じゃなかった筈さよ!何があったんさ!』
乾の声には怒りのような、焦りのような、よくわからない感情がこもっているように感じる。友人にとっても妹は大切な存在なのだろう。だから責任を問うように聞いてくる
「…本当にそう思っているのか?」
『…どういう事さ?』
「そんな行動に出るのはあいつの性格を考えればわかる事だろ」
『でも昔はそんな事──』
「それはそんな行動を俺が代わりに全部やっていたからだ。俺がいなければあいつはやる」
『だけど……』
「乾、お前一体どうしたんだ?俺からすればお前の方がおかしいぞ」
そう言うと友人は黙ってしまった。聞かれたくない事を聞いてしまったような、そんな反応に思える
「…いや、無粋な質問だったな。悪い、忘れてくれ」
これ以上は聞くべきではないだろうと判断し、すぐに話を中断した
『徹…』
「…?」
『徹は……』
「よく聞こえないんだが…」
『…やっぱり何でもないさ!徹、明日から学校さよ。自己紹介に失敗したら恥ずかしいからきちんと練習しとくさ!それじゃ!』
それだけ言うと、乾は通話を切った。徹も通話を切り、携帯をポケットになおす
「何なんだ…一体」
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