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「………」
「………」
「……ねえ、お兄ちゃん」
「……なんだ」
「怪我の事、なんで聞いてこないの?」
暗闇の中、流は自分の手を見る。白い包帯でぐるぐるに巻かれた両手は、何があったのだろうかと、見た者を心配させそうなものだった
「…聞いたところで、お前が変わらないのはわかりきってるからな」
「そんなのわからないじゃない」
「わかるよ。一体何年、兄妹やってると思ってんだ」
ククッと笑っているのが聞こえる。隠し事をしようが、何をしようがお見通しと言う事か。流はため息を吐く
「…やっぱりお兄ちゃんには、わたしの事は全部わかっちゃうんだね」
「そうでもないぞ」
「え?」
「お前の超能力がよくわからん。幾つか例は思いつくが、やっぱ目で見ないと判断は出来ないな」
「ああ…そういう……」
少し呆れたような拍子抜けしたような、そんな感じがした。期待通りの事というのはなかなか起きないものだ
(でも、だからこそ人生って楽しいんだと思うんだ)
「流?」
「ふふふ、何なのかは教えないよ~♪」
「…いや、それは別に構わんが……」
流の明るい返事に徹は小さく頷く。実は徹がなんだこいつ?みたいな表情をしていたのは内緒だ
「大丈夫だよ。誰も悲しまないで欲しいのが、わたしの願いで能力そのものだから。もちろん、お兄ちゃんや乾ちゃんもそこに入っているからね」
「…そうか」
徹はそれ以上の事は口にしなかった。妹のやる事に口は出さない、それが兄の役割だ
だがもし、もしも彼女がやる事に行き詰まったら?疲れたら?そしたら彼女の羽を休める場所になってやろう
例えこの面倒が多い街の中であっても、兄妹の絆はきっと色褪せない
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