第1章

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倒れたゆきを抱き起こす。 「うぅ。」 肩に銃弾を受けていた。 貫通はしていない。 もうすぐ国に着く。 治療はそれから。 ジュノはカバンから包帯を取り出し止血する。 「ゆき、ナンデコンナ。」 「へへ。」 本物の雪くらい白いゆきが微笑む。 ほんとだ。辛いのに微笑まれるとこんなに悲しいんだ。 ジュノの胸が鈍く痛む。 ジュノも微笑み返す。 いろんな気持ちを押し込めて。 「ゆき、ヤッパリぜんぜんくさくないです。クルノニキヅカナカッタ。」 「ジュノさんのほうがくさい。」 「くさいオトコノホウガもてるんです。」 その後もふたりは前を進む。 しかし、ゆきは傷のせいで発熱し、歩けなくなる。 ジュノはゆきを背負って先を進んだ。 「ジュノさん、私を置いてっていいから。」 「日本語ワカリマセン。」 そんな会話がでるようになる。 「ゆき、ネムッテ、おきたらツイテルカラ。」 二人は、真っ暗な暗闇の中にいる、そんな気がした。 もう前に進んでも、それは小さな一歩でしかなく、また襲撃を受けたら、ゆきだけではなく、ゆきを見捨てられないジュノも死ぬ。 意味のない一歩。 希望への一歩じゃなくて、 絶望への一歩。 悲しい歩み。 せめて私を置いていって。 ジュノさんが死ぬのは、自分が死ぬのより耐えられない。 もし、私がしんでも、ジュノさんは生きていてほしい。 生きてその素敵な笑顔でみんなを幸せにして、ジュノさんも幸せになって。 どうしてこんな気持ちになるんだろう。 休憩中、ジュノが眠っている。 その頭を撫でる。 愛おしさがこみ上げる。 あぁ。私、ジュノさんを愛しちゃったんだ。 頬にふれた、名残惜しむように。 そしてゆきはフラフラしながら歩き出す。 なるべく見渡しの良い開けた場所を通って。
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