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倒れたゆきを抱き起こす。
「うぅ。」
肩に銃弾を受けていた。
貫通はしていない。
もうすぐ国に着く。
治療はそれから。
ジュノはカバンから包帯を取り出し止血する。
「ゆき、ナンデコンナ。」
「へへ。」
本物の雪くらい白いゆきが微笑む。
ほんとだ。辛いのに微笑まれるとこんなに悲しいんだ。
ジュノの胸が鈍く痛む。
ジュノも微笑み返す。
いろんな気持ちを押し込めて。
「ゆき、ヤッパリぜんぜんくさくないです。クルノニキヅカナカッタ。」
「ジュノさんのほうがくさい。」
「くさいオトコノホウガもてるんです。」
その後もふたりは前を進む。
しかし、ゆきは傷のせいで発熱し、歩けなくなる。
ジュノはゆきを背負って先を進んだ。
「ジュノさん、私を置いてっていいから。」
「日本語ワカリマセン。」
そんな会話がでるようになる。
「ゆき、ネムッテ、おきたらツイテルカラ。」
二人は、真っ暗な暗闇の中にいる、そんな気がした。
もう前に進んでも、それは小さな一歩でしかなく、また襲撃を受けたら、ゆきだけではなく、ゆきを見捨てられないジュノも死ぬ。
意味のない一歩。
希望への一歩じゃなくて、
絶望への一歩。
悲しい歩み。
せめて私を置いていって。
ジュノさんが死ぬのは、自分が死ぬのより耐えられない。
もし、私がしんでも、ジュノさんは生きていてほしい。
生きてその素敵な笑顔でみんなを幸せにして、ジュノさんも幸せになって。
どうしてこんな気持ちになるんだろう。
休憩中、ジュノが眠っている。
その頭を撫でる。
愛おしさがこみ上げる。
あぁ。私、ジュノさんを愛しちゃったんだ。
頬にふれた、名残惜しむように。
そしてゆきはフラフラしながら歩き出す。
なるべく見渡しの良い開けた場所を通って。
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