第1章

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ゆきは林の中を走っている。 真っ暗な中。 小枝に体が擦り切れるのも構わず、 走って走って。 息があがる。 苦しい。 けど、足を止めてはいけない。 奴らが追っかけてくる。 ゆきは走る。 走れなくなるまで。 完全に体が悲鳴をあげ、ゆきは倒れた。 手と顔に冷たい湿った土の感触がした。 そっと、後ろを振り返る。 暗がりに木が茂ってるのがうっすら見える。 耳をすます。 風の音だけ。 人工的な音はなにもしない。 ゆきは再び倒れこむ。 息を止めてたが少し呼吸をする。 しばらく休もう。 虫が体の上を這う感じがした。 いつもだったら、ギャーギャー騒ぐのに それすら気にならなくて、泣けてくる。 どうしてこんな目に合わなきゃいけないの。 ゆきは商社に勤めるOL。 今朝もふつうに出勤しようと家をでた。 そこで覆面の男数名に捕らえられた。 目隠しをされ飛行機に乗らされ、 睡眠薬を飲まされたのか気を失っているうちに、軍事施設のような所へ連れて来られた。 軍事施設かは分からない。 迷彩服をきている人がたくさんいて、 知らない外国語を話していた。 ゆきは商社だか取引先はほぼヨーロッパ。 この軍人達はアジア系の顔。 仕事には関係のない連れ去り。 ひたすら怖くて怖くて。 隙をついて逃げてきた。 でも、逃げると言ってもどこに行けばいいのか、ここがどこかも分からない。 けど、あの場所からは少しでも離れないと。 ゆきは起き上がる。 もう一度振り返ったけど、人の気配はない。
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