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今日、父は制服を着ている。軍医の軍服は一見すると他の士官と遜色のないものだ。背が低いはずの父が居住まいを正すと冒しがたい存在感を醸す。
「良い部屋だね。知子があれこれ言いそうだな。兄さんばかり良い思いしてって」
幼くして母を亡くした娘を父は溺愛していたので、少しばかり贅沢に慣れ、少しばかりわがままで、兄に張り合うように「私も!」と割って入るところがあった。
「知子にもちゃんと考えてある」
え? と幸宏は父を見る。
目だけ息子の方を見て、内緒だぞ、と言うように唇の前で指を一本立てた。
「考えて、って何を」
「今は言えん。直にわかる」
「言わなきゃいいんだろ、何さ。教えて」
「お前は隠し事がヘタだからだめだ」
「意地悪だなあ」唇を尖らせた息子に父は答えた。
「贈り物はその人を第一に考えて選ぶものだ」
ピンときた。
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