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「新しく軍馬を支給された、その訓練があるんだよ」
倫宏の懐から出た一枚の写真には、お世辞にも秀麗とは言いがたく、たくましく丸い顔に短い首を持つ胴まで丸い馬が写っていた。
「白黒だからわからない。何色なの」
「青毛だ」
青毛とは限りなく黒に近い馬体のことだ。
「名はクシナダ号というんだが」
倫宏は乗る軍馬に別名をつけていた。最初は息子の、次は息子の、その次も息子の名前だった。
「……また別の名前をつけてるの。今度も僕?」
「ミズキ、だよ」
ミズキとは幸宏の母で倫宏の妻である瑞樹の名だ。
「母さんに乗っちゃうのかい」
呆れて大声を出した。顔が何故か赤らむ。
夫が妻に乗るとは、ある行為しか浮かばないではないか。
ほう、という顔をして、倫宏は破顔した。
「そうか、君もそういうお年頃なんだね、いよいよ本格的に女に興味を持つようになったか」
「ちが……っ! そうじゃないよ!」
「だって、君は大きいおっぱいが好きだろう、いつだったか……」
「うわーっ!」
今度こそ耳まで真っ赤になって父親の言葉を止めた。明朗な父親の笑い声が室内に響いた。
「それでいい、若い男はそれぐらいでなくちゃ困る」
「知らないよ!」
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