【2】少年期 

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「新しく軍馬を支給された、その訓練があるんだよ」 倫宏の懐から出た一枚の写真には、お世辞にも秀麗とは言いがたく、たくましく丸い顔に短い首を持つ胴まで丸い馬が写っていた。 「白黒だからわからない。何色なの」 「青毛だ」 青毛とは限りなく黒に近い馬体のことだ。 「名はクシナダ号というんだが」 倫宏は乗る軍馬に別名をつけていた。最初は息子の、次は息子の、その次も息子の名前だった。 「……また別の名前をつけてるの。今度も僕?」 「ミズキ、だよ」 ミズキとは幸宏の母で倫宏の妻である瑞樹の名だ。 「母さんに乗っちゃうのかい」 呆れて大声を出した。顔が何故か赤らむ。 夫が妻に乗るとは、ある行為しか浮かばないではないか。 ほう、という顔をして、倫宏は破顔した。 「そうか、君もそういうお年頃なんだね、いよいよ本格的に女に興味を持つようになったか」 「ちが……っ! そうじゃないよ!」 「だって、君は大きいおっぱいが好きだろう、いつだったか……」 「うわーっ!」 今度こそ耳まで真っ赤になって父親の言葉を止めた。明朗な父親の笑い声が室内に響いた。 「それでいい、若い男はそれぐらいでなくちゃ困る」 「知らないよ!」
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