【2】少年期 

5/19
前へ
/19ページ
次へ
例えば容姿。 好奇心を隠せない瞳は大きく、鼻梁が通った整った顔立ちは母譲り。少女歌劇の男役と言っても通りそうで、いつも本当の年齢より年下に見られ、近所のご婦人方に可愛がられた。柔らかい癖毛をぴっちりなでつけた額の奥には無尽蔵の智を有する頭脳が収められていた。 実際、頭皮を覆うこの癖毛がくせ者で、色まで薄かった。顔立ちと相まって敵国人との合いの子かと揶揄されることも多かった。あまりに髪のことで囃されるものだから、いつもくりくりに刈り上げていた。そうしたら髪のことではとやかく言われなくなった。 しかし、切ったり刈ったりできる男の子はいい、妹は災難だった。 容姿は兄妹そろって父より母の血筋が強く、特に妹は「君はお母さんの生まれ変わりだね」と父親や母を知る他の大人たちにから褒められた。兄が目鼻立ちくっきりなのだから妹も同様で、他の子供よりいろいろと目立ってしょうがなかった。特に癖毛は兄より強く、いくら櫛で伸ばしてもくるりんと巻いた。三つ編みできっちり編み込んでもゆるゆるとうねる癖は消せるものではない。学校ではいつも苛められ泣かされて帰ってきた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加