第1章

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式が終わって間もないというのにわざわざ待っていてくれていたのだろうか。 申し訳なさもあったが、それ以上にどんな用事があるのか2人は気になっていた。 「しかし、お二方ともいったいどうしたのじゃ?まだ色々と予定があるじゃろうに」 「そうね、お忙しい中どうしたんですか?」 すると2人の新郎新婦は揃って 「「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」」 頭を下げてきたのだ。 「「…え?」」 弥生と羽之は目を丸くした。いきなりのことで驚いているのだ。 「言い訳がましいとは思うんですがあなた方の元へ訪れたあの頃、俺たちは結婚を両親にやっとの思いで許してもらって有頂天になってたんです」 「本当ならもっと丁寧に注文、というか着物についてお話すればよかったのに勝手に適当に注文して、さっさと帰っちゃったりして」 「今考えてみても本当に失礼で迷惑なことをしてしまったな…、と思いまして」 「それでこうしてお二人をお待ちしていたんです」 2人はそう言うとまた深々と頭を下げた。 「か、顔を上げてください!せっかくの祝日なのに!」 「そうですじゃ!むしろ落ち度はこっちにあったというべきなのじゃ」 「え…そうなんですか…?」 2人が顔を上げて不思議そうな目で弥生たちを見た。 「え、ええ…、何にせよこっちも職人として仕事をしている以上、多少の苦難は何とかしてでも乗り越えなきゃいけないんです。仕上がりまでに時間がかかりすぎたのは自分の未熟さ故だと思っています」 「うむ、だからお二人はそんなに気になさることではないのじゃ」 「いや、ですが…」 新郎新婦は何か言おうとしたが 「とにかく、お二人にとって今日は特別な日なんです!謝るんじゃなくもっと明るくしてもらった方がこっちも嬉しいです!」 「わしとしては稲荷をしっかり馳走になったしのぉ、それだけで満足なのじゃ!」 羽之たちに先にこう言われた2人はまだ何か言いたげではあったが素直に下がった。 「…まあ、俺たちも言いたいことは言えましたし、お二人にそう言っていただけて嬉しいです」 「お忙しい中ありがとうございました!」 「こちらこそありがとうございました」 「ごちになったのじゃ、ありがとうなのじゃ!」
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