五章

37/40
前へ
/40ページ
次へ
「駄目ですよ。目が眠そうですよ」 「なんだか保護者みたいな言い方だー」 「ほら…その言い方が酔ってる証拠ですってば」 大人の癖に薫さんが頬っぺたを膨らませてつまらない顔をする。唇をアヒルみたいに尖らせるオマケ付きだった。 「子供みたいな事してないで、飲んで帰りますよ」 「隆くんのが子供の癖に…」 ぶつぶつ言いながら、呆れるぐらいの勢いでジョッキのビールを飲み干した。 おぼつかない足元でトイレに行き、それでも会計で押し問答の末に半分づつお金を払った。 「私の方が飲んでるのに。素直に奢らせなさいよねー」 確かに貧乏学生には痛いけれど、プールに行った時のレンタカー代だってガソリン代だって知らない内に薫さんが払っていた。 全部払って貰うのはどうにも情けない話なのだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加