六章

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「からかってなんてないです…可愛い」 仄かな汗と初めて会った時の柑橘系の香りが僕を包み込む。 堪らない感情が腰に集まるけれど、もっともっと薫さんを感じていたい。 もう一度顔を見つめて、今度はゆっくりと唇を合わせてみる。 薄い唇も、小さな舌先も、狭い口腔も、綺麗に並ぶ歯も…愛しくて堪らない。 少しだけ漏れる薫さんの押し殺した声が、僕の耳から身体中に響く。 僕の両肩を薫さんが押した。何かいけない事をしてしまったかと不安になった。 「あの…」 薫さんの指が僕の口を塞ぐ。 「ねえ…隆くん…私で良いの?」 良かった…気を悪くしたのじゃ無かった。 「薫さんが良いです…」
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