六章

8/40
前へ
/40ページ
次へ
抑えていた気持ちはぷっつりと切れて、何も考えられずに振り向いた。 目の前に彼女の小さな顔があって、目が合った瞬間彼女の瞼が閉じた。 もう僕の心臓は飛び出しそうで、口の中はカラカラに乾いてしまっている。 何故こうなっているのかも、彼女がどんな思いなのかも考えられない。 今僕がすべきなのは唇を重ねる事しかなくて…焦っている事が伝わらないようにゆっくり顔を寄せた。 キスをするのは初めてではないけれど、柔らかく触れた途端頭は真っ白になる。 おずおずと舌を割り込ませると、彼女の唇が応えるみたいに少し開いた。 僕は夢中でその行為を繰り返した。 何分なのか、それとも思ったより短い時間なのかもわからない。 何度目かの唇が離れた時、彼女が耳元で囁く。 「横に来て…」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加