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彼女の荷物を自転車に載せて、二人だけのアトリエまでのんびりと歩いた。
僕の事を描いた絵のどれが採用になったから仕上げなきゃだとか、久しぶりに部屋のドアを開けた時の澱んだ空気の事だとか…
そんな事を彼女が愉しそうに僕に話す。
僕は彼女を待つ間何をして過ごしただとか、薫さんの絵の仕上がり具合だとかを話した。
「ねえ、隆君…気になってるんだけどね。無いわね」
「何がですか?無いって」
「尻尾…ふかふかの尻尾に触るの、楽しみにしてたのにね」
「あれ?おかしいなぁ。今朝まで生えてたのに…落としちゃったみたいだ」
「なーんだ、残念だわね。良いわ、改札で隆くん尻尾振ってるみたいに見えたしね」
「酷いなぁ。でも、考えてましたよ」
「何を?」
「ハチ公の気持ち…」
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