八章

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彼女の荷物を自転車に載せて、二人だけのアトリエまでのんびりと歩いた。 僕の事を描いた絵のどれが採用になったから仕上げなきゃだとか、久しぶりに部屋のドアを開けた時の澱んだ空気の事だとか… そんな事を彼女が愉しそうに僕に話す。 僕は彼女を待つ間何をして過ごしただとか、薫さんの絵の仕上がり具合だとかを話した。 「ねえ、隆君…気になってるんだけどね。無いわね」 「何がですか?無いって」 「尻尾…ふかふかの尻尾に触るの、楽しみにしてたのにね」 「あれ?おかしいなぁ。今朝まで生えてたのに…落としちゃったみたいだ」 「なーんだ、残念だわね。良いわ、改札で隆くん尻尾振ってるみたいに見えたしね」 「酷いなぁ。でも、考えてましたよ」 「何を?」 「ハチ公の気持ち…」
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