八章

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「ねえ隆くん、変に気を遣うのやめようね。やりたい事はするし、お願いしたい事はちゃんと頼むからね」 微笑みながらそんな風に薫さんが言う。 僕は随分気負っていたかもしれない。 「そうですね。ちょっと気楽にいきます」 二人でのんびり夕食を食べ、自転車でコンビニへ買物へ行く。 ついでに、僕は部屋から小さなCDコンポをアトリエへ持ち込んだ。 少なめのボリュームで僕の好きなバンドの音楽を流す。 薫さんは興味深そうに、僕の持ち込んだCDのジャケットを眺めていた。 音の存在しなかったアトリエに、僕が少し音楽と一緒に入り込む。 翌日には、僕がバイトの間に買い込んだ何枚かのCDが横に並んだ。 無理に何かを聞き出したり、あれこれと考えたり… そうじゃなくて、こんな風に緩やかに彼女を理解出来てゆく事が楽しかった。
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