八章

34/40

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
バイトの無い日には、一日中彼女の姿が描かれたキャンバスに向かう。 薫さんは、依頼されたカヴァーの絵を描きあげたけれど暇を見つけては僕をスケッチする。 「東京に戻ったら壁に飾るわ。そうしたら寂しくないでしょ?」 「その絵も?」 「そうよ、裸の絵も枕元に飾るの」 「他の人に見られたり…」 「誰も入れないから大丈夫」 「ずるいなぁ…僕も描きたい」 薫さんが照れて笑う。 「裸の絵って事?」 「そう…駄目かな?」 僕は彼女の丸く形の良い胸に指を滑らせて言う。 漸くどうやって触れれば、彼女が反応してくれるか理解していた。 「もう…ずるいわ…そんな事しながら」 小さく漏れる声を遮るみたいに唇を重ねる。 愛おしい薫さんの全てを僕の指先で閉じ込めたかった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加