八章

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軽い食事を終えて、僕は半分残っているカップを残してトレーを下げに下へゆく。 戻った時には薫さんがベッドに寝そべっていた。仰向けに転がった身体に、ピンと張ったタオルケット。 僕は椅子をベッドの正面に置いて、スケッチの準備をした。 薫さんの顔が緊張しているのがわかる。明るい所で薫さんの全てを視界に入れるのは初めてだった。 ベッドに近づき、両手で押さえている邪魔なパイル地をゆっくりとどける。 彼女が僕を見据えて“意地悪”と声を出さずに口だけ動かした。 鎖骨の綺麗なくぼみ…丸くなだらかな湾曲を描く二つの乳房が現れる。 射し込む明るさに、微かな産毛が光って見えた。 「恥ずかしい…」 僕はその声を無視して、ゆっくりと先に進む。 胸の湾曲の終わりから締まったウェストへ、二本の足が伸びる交わりに薄い柔らかい体毛が見えた。 一瞬、彼女の身体が硬直するみたいに強張った。
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