八章

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本当にあれで良かったのかと、少しどきどきしたけれど彼女は僕を見て満面の笑みを浮かべてくれた。 「そうか…公平くんだね」 「ばれちゃいますよねぇ。やっぱり」 彼女は照れたみたいに僕に手招きをする。 「着けてくれる?」 「喜んで…」 立ち上がって僕に背を向ける。そうして両手で後ろ髪を掻きあげた。 細くなめらかなうなじにどきっとするけれど、肩の前に腕を回して小さな金具をうなじで止めた。 くるりと彼女が僕のほうを向いて、自慢するみたいにネックレスを見せる。 白いノースリーブのTシャツ。胸元に小さなティアドロップのネックレスが複雑に光っていた。 「似合いますよ。思った通りだ」 もう一度笑うと、彼女の身体が僕にしがみつくみたいに近づいた。 首に回された腕が、僕の頭を引き寄せた。 一週間ぶりの彼女の唇は、夢中になるほどに心地よかった。
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