九章

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「無駄だよ…隆先輩…」 「美紀!」「美紀ちゃん」 やつれた顔で、美紀が立っていた。真っ直ぐに公平ではなく僕を見据えていた。 僕は身体を起こして美紀を見た。 「無駄って…何の事?」 「あの女の事!」 聞いた事のない大きな声で美紀が叫んだ。周りでその様子を訝しげに振り返る奴もいた。 「美紀?あの女って…薫さんの事か?」 唖然とする僕に変わって公平が口を挟んだ。美紀はそれでも公平を見なかった。 「そうよ!あの女の事!」 「どう云う事だよ…」 美紀が薫さんの事を“あの女”と呼ぶ。怒りに満ちた声で、顔で。
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