九章

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「変なの…」 「そうですね…僕は変なんです。僕の知らない薫さんの世界に嫉妬したりしてる」 「電話するわよ。声は届くわ」 「じゃあ、その声に尻尾でも振りますよ。パタパタって」 「見えないのが残念だねぇ」 「会いに行きますよ。冬になったら…」 「じゃあ、お部屋は片付けておかないとね。壁に隆くんの裸が飾ってあるかもね」 「……嬉しいような恥ずかしいような」 繋いだ手が汗ばんでも、ずっとそのままで握り続けた。 一回り小さい彼女の手… この手が離れないように、流れ星にでもお祈りしたい気分だった。
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