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残酷だけれど、当然の様に一日が過ぎて行く。
憂鬱な気持ちを隠して、出来るだけ笑いながら薫さんと話す。
東京の住所をメモしたり、電車の乗り換えを聞かせてくれたり…
出入りしている出版社の名前とか、カヴァーを描いた作家さんの事とか…
きっと僕に気を遣っていて、そんな向うでの自分の生活を彼女が聞かせてくれる。
僕はその話しに相槌をうち、少しでも距離が縮まる様に聞いた。
それで何かが変わるわけでもないけれど、そんな気持ちが嬉しくて切なかった。
「ねえ隆くん、帰る前に美紀ちゃん達にも会いたいな」
「そうですね。連絡しましょうか?」
言われてみればその通りだ。残された時間は少ないけれど、公平や美紀がいなければこんな風になっていないのだ。
薫さんが帰ってしまう二日前の夜、四人で食事をしようと決めた。
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