終章

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十年の歳月は、僕を大人にするのに充分な時間だった。 僕は彼女の年齢を追い越して、幾人かの女性と恋におちて別れて… あの頃には、どうしても口に出来なかった“愛してる”と云う言葉も意味もわかる様になった。 青臭く感情だけを薫さんにぶつけていた僕。 きっと貴女は、そんな僕が壊れてしまう事を心配したのだろう。 「なあ、隆。本当に今日帰るのか?一泊ぐらい出来ないのかよ」 「また来るよ。仕事立て込んでてさ」 「売れっ子だもんね。隆くん」 「なんとか食ってるだけだよ」 「そうか、仕方ないな」 公平が笑いながら僕に右手を差し出した。 照れながら、僕も右手で握手する。美紀も同じ様に手を出した。 「幸せにな。ありがとうな、公平。美紀ちゃん」 「隆くんもね。幸せになってね…」 幸せそうな二人を見ながら、一人で駅へ向かう。 まだ、電車の時間には余裕があった。
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