眠れないほど好き

1/24
前へ
/24ページ
次へ

眠れないほど好き

「お疲れさまでした」 あと少しで仕事を終えるという頃、支店長代行の唐沢那智(カラサワナチ)が、上のフロアであった営業会議から戻ってきた。 支店長は八月から病気療養中で、唐沢はその代行として、世界有数といわれる商社、業平商事の本社から派遣されてきた。 まだ三十二歳という若さながら、さすがに基本が本社所属というだけあってやり手だ。 まず、決断するのにためらいがない。 それだけの自信があるのだろうけれど、“上から目線”ということはなくて、部下が年上となるとそれなりの敬意が見える。 先月になって、十二月から支店長が復帰することが決まり、引き継ぎも含めて唐沢がいるのはあと一カ月くらいだ。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

500人が本棚に入れています
本棚に追加