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眠れないほど好き
「お疲れさまでした」
あと少しで仕事を終えるという頃、支店長代行の唐沢那智(カラサワナチ)が、上のフロアであった営業会議から戻ってきた。
支店長は八月から病気療養中で、唐沢はその代行として、世界有数といわれる商社、業平商事の本社から派遣されてきた。
まだ三十二歳という若さながら、さすがに基本が本社所属というだけあってやり手だ。
まず、決断するのにためらいがない。
それだけの自信があるのだろうけれど、“上から目線”ということはなくて、部下が年上となるとそれなりの敬意が見える。
先月になって、十二月から支店長が復帰することが決まり、引き継ぎも含めて唐沢がいるのはあと一カ月くらいだ。
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